今回のテーマは「公務員の家賃補助のメリット」です。
ご承知のとおり、公務員には住居手当という家賃補助の制度があります。
国家公務員だと家賃の額に応じて最大2万8000円支給されますし、地方公務員だと自治体によっては最大3万円超支給されます。
これは一見、素晴らしい制度なんですが、よくよく調べてみるとメリットが少ないんです。
なぜだか分かりますか?
もしその理由を知りたい方は、ぜひ本記事をご覧いただければと存じます。
参考:【家賃補助】公務員の住居手当を「正確に」解説します。最大3万円超。
目次
公務員の家賃補助はメリットが少ない
結論からいうと、公務員の家賃補助(住居手当)はメリットが少ないです。
なぜなら、家賃補助には税金と掛金が発生するからです。
公務員の家賃補助は非課税ではありません。
したがって下記が課されます。
- 所得税
- 住民税
また、家賃補助は共済掛金の算定基礎に含まれます。
共済掛金とは、皆さんが加入している共済組合の掛金のことで、給与明細の控除欄に書かれた下記のことを言います。
- 共済(短期)
- 共済(長期)
- 共済(介護)
- 共済(福祉)
なので、家賃補助をもらうと共済掛金の額も増加します。
私は市職員時代に3年ほど家賃補助を受け取っていましたが、この事実を知ったのは市役所を辞めてからでした・・・。
皆さんにはこの事実をちゃんと知ってもらいたいです。
公務員の家賃補助に課される税金と掛金
では実際、いくら位の金額が税金と掛金として差し引かれるのでしょうか。
結論からいうと、年間で約12万5000円差し引かれます。
繰り返します。年間で約12万5000円です。
もちろんこの額は、家賃補助の支給額や個人の収入・控除額によって変動します。
上記は下記の場合を想定した場合の金額です。
- 家賃補助を月額2万8000円(年額33万6000円)受け取っている
- 一般的な若手公務員の年収である(年収400〜500万程度)
おそらく大半の人が上記に該当するでしょう。
12万5000円を単純計算すると、支給額の37%が税金と掛金となります。
「いやいや、そんな馬鹿なことがあるはずがない」
そう思う方もいるでしょう。
そこで今回は、12万5000円の根拠も紹介します。
その①:所得税
まず、所得税からみていきましょう。
結論として、家賃補助年額33万6000円に対し、所得税が約5万差し引かれます。
これは給与所得控除20%、所得税率20%の場合を想定したものです。
なお所得控除額や、給与所得控除計算時の「収入×●%+▲円」の「▲円」の部分は、家賃補助の有無に関わらず発生するものなので、先ほどの12万5000円の計算からは除外しています。
自分で計算したい方は、国税庁の下記ページをご参照ください。
所得税額は、個人の収入額・控除額によって変動するので、自分の状況をベースに計算することで、より厳密な額を算出できます。
その②:住民税
続いて、住民税をみていきましょう。
結論として、家賃補助年額33万6000円に対し、住民税が約2万5000円差し引かれます。
これは給与所得控除20%、住民税所得割標準税率10%の場合を想定したものです。
さて、所得割の標準税率は、市町村民税及び特別区民税ですと6%、都道府県民税ですと4%に設定されています。
したがって、住民税全体としては所得割の標準税率はこれら2つの税率を足した10%ということになります。
※あくまで標準税率なので実際の所得割額の税率は都道府県や市区町村によって異なる可能性があります。
所得控除額や給与所得控除額、住民税均等割額に対する考え方は、所得税額の時と同じです。
これらは家賃補助の有無に関わらず発生するものなので、先ほどの12万5000円の計算からは除外しています。
その③:共済掛金
最後に、共済掛金をみていきましょう。
結論として、家賃補助年額33万6000円に対し、共済掛金が約5万円差し引かれます。
共済掛金は下記の計算式によって決まります。
共済掛金=標準報酬月額(4~6月の基本給と諸手当の合計額)×掛金率
家賃補助(住居手当)は上記式の諸手当に該当しますから、家賃補助の支給に伴って共済掛金も値上がりします。
掛金率は加入する共済組合によって様々ですが、基本給と諸手当の15%前後のことが多いようです。
なので家賃補助の支給に伴って増加する共済掛金の年額は下記のとおり。
(2万8000円×15%×12ヶ月)=50400円
公務員は賃貸にすべきという意見について
「公務員は賃貸か持ち家どちらがいいか」を述べる際に、「公務員は家賃補助がもらえるので賃貸がいい」とする方が多いです。
しかしそういった方々の大半は、税金や掛金を加味していません。
年額33万6000円がすべて手元に入るなら「まぁ悪くないかな」と思います。
しかし冒頭で述べたとおり、約37%は税金と掛金で消えていきます。
したがって実質手元に入るのは年額21万1680円・・・。
年間20万でもありがたいわけですが、月額約1万7000円の恩恵だけで圧倒的有利として賃貸を押しまくるのは無理があるのかなぁと。
なので賃貸vs持ち家の論争は個人の価値観によって変わるのかなぁと思います。
もし一人暮らしを始めるなら7月入居がオススメ
もしあなたが公務員で現在実家暮らしをしているなら、一人暮らしを始めるのは7月がおすすめです。
なぜなら共済掛金が1年間安くなるから。
先ほど述べたとおり、共済掛金は4〜6月の標準報酬月額によって決まります。
したがって、7月から住居手当を受け取れば、翌年8月まで標準報酬月額を低く抑えられます(4〜6月の標準報酬月額によって9月から翌年8月までの掛金が決まるため)。
一人暮らしを検討中の方は参考にしてもらえれば。
まとめ
というわけで今回のまとめです。
- 公務員は家賃補助(住居手当)が貰えるが、そのうちの幾らかは税金と共済掛金として差し引かれる。
- 「公務員は家賃補助がもらえるので、持ち家よりも賃貸がいい」という意見の大半は税金と共済掛金を加味していない。
- 共済掛金の計算ルールを考慮すると、公務員が一人暮らしを始めるのは7月からがいい。掛金を1年間低く抑えることができる。
最後までご覧いただきありがとうございました。
本サイトでは公務員の皆さんに役に立つ情報を発信しています。
面白いと思った方は、ぜひ本サイトのお気に入り登録をお願いします😊