こういった疑問にお答えします。
本記事の内容は下記です。
- 公務員は家賃補助がもらえる
- 公務員の家賃補助は全国一律でない
- 国家公務員の家賃補助
- 地方公務員の家賃補助
- 家賃補助が年収にあたえる影響
なお、この記事を書いているのは、元公務員です。
実際に家賃補助を利用していたので、人よりも詳しくお話できる自信があります。
なので、安心して読んでもらえたら。
もし分からないことがあれば、コメント欄から質問してくださいね。
目次
公務員には家賃補助がある
賃貸物件に住んでいる公務員は、必要書類を添えて職場に申請することで、家賃補助が受けられます。
正式名称は住居手当です。俗称として住宅手当と呼ばれることもあります。
家賃補助は、国家公務員も地方公務員も受けられます。
根拠法令は下記のとおり。
国家公務員 | 一般職の職員の給与に関する法律(第十一条の十) |
---|---|
地方公務員 | 地方自治法(第二百四条・第二項) |
注意:住居手当は持ち家手当ではない
正式名称が住居手当ということもあり、持ち家に対する手当(=持ち家手当)と勘違いする人も多いです。
しかし、住居手当は持ち家手当ではありません。
賃貸暮らしの公務員のみが対象となります。
一部の自治体では、住居手当とは別に、持ち家手当を支給することもあります。
しかし、近年では多くの自治体が廃止しています。
持ち家手当について深堀りしたい方は、下記の記事をご覧ください。
公務員の家賃補助→全国一律でない
公務員の家賃補助は一律ではありません。
下記の2つによって変動します。
- 勤め先の官公庁
- 借りる物件の家賃
順番に説明します。
要素①:勤め先の官公庁
家賃補助の金額は、勤め先の官公庁よって変わります。
なぜなら、各官公庁が定める法令によって変わるからです。
例えば、国家公務員の補助額は「一般職の職員の給与に関する法律」によって規定されていますし、地方公務員の補助額は各団体の定める条例によって規定されています。
したがって、公務員の家賃補助額を「全国一律で〇〇円」と説明することは不可能です。
要素②:借りる物件の額
実は、借りる物件の家賃によっても補助額は変わります。
例えば、家賃2万円と家賃5万円の物件では補助額が違います。
なぜなら、法令でそのように決められているからです。
これは後で詳しく解説します。
国家公務員の家賃補助→最大28,000円
国家公務員の家賃補助は月額最大28,000円です。
一部のサイトでは月額最大27,000円と説明していることがあります。
しかしそれは、令和2年3月31日までの話です。
令和2年4月1日以降は28,000円が正しいので、他のサイトを見る場合は注意してくださいね。
関連記事:公務員の家賃補助に共益費は含まれる?
令和2年3月末まで:最大27,000円もらえます
家賃補助額の計算式は下記のとおりです。
月額家賃 | 補助額 |
〜16,000円 | 0円 |
16,001円〜23,000円 | 月額家賃−12,000円 |
23,001円〜 | (月額家賃−23,000円)÷2+11,000円(最大27,000円) |
上記のとおり。
最もお得な家賃は55,000円です
計算式をもとに最もお得な家賃を逆算すると、月額55,000円になります。
逆算の方法は下記のとおり。
(月額家賃−23,000円)÷2+11,000円=27,000円
⏩(月額家賃−23,000円)÷2=16,000円
⏩月額家賃−23,000円=32,000円
⏩月額家賃=55,000円
上記のとおり。
根拠法令もお伝えします
根拠となる法令は下記のとおりです。
一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)
施行日:令和元年九月十四日第十一条の十 住居手当は、次の各号のいずれかに該当する職員に支給する。
一 自ら居住するため住宅(貸間を含む。次号において同じ。)を借り受け、月額一万二千円を超える家賃(使用料を含む。以下同じ。)を支払つている職員(国家公務員宿舎法第十三条の規定による有料宿舎を貸与され、使用料を支払つている職員その他人事院規則で定める職員を除く。)
二 第十二条の二第一項又は第三項の規定により単身赴任手当を支給される職員で、配偶者が居住するための住宅(国家公務員宿舎法第十三条の規定による有料宿舎その他人事院規則で定める住宅を除く。)を借り受け、月額一万二千円を超える家賃を支払つているもの又はこれらのものとの権衡上必要があると認められるものとして人事院規則で定めるもの
2 住居手当の月額は、次の各号に掲げる職員の区分に応じて、当該各号に掲げる額(当該各号のいずれにも該当する職員にあつては、当該各号に掲げる額の合計額)とする。
一 前項第一号に掲げる職員 次に掲げる職員の区分に応じて、それぞれ次に掲げる額(その額に百円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額)に相当する額
イ 月額二万三千円以下の家賃を支払つている職員 家賃の月額から一万二千円を控除した額
ロ 月額二万三千円を超える家賃を支払つている職員 家賃の月額から二万三千円を控除した額の二分の一(その控除した額の二分の一が一万六千円を超えるときは、一万六千円)を一万千円に加算した額
二 前項第二号に掲げる職員 前号の規定の例により算出した額の二分の一に相当する額(その額に百円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額)
令和2年4月から:最大28,000円もらえます
計算式は下記のとおりです。
月額家賃 | 補助額 |
〜16,000円 | 0円 |
16,001円〜27,000円 | 月額家賃−16,000円 |
27,001円〜 | (月額家賃−27,000円)÷2+11,000円(最大28,000円) |
上記が令和2年4月以降の計算式です。
最もお得な家賃は61,000円です
計算式をもとに逆算すると、最もお得な家賃は61,000円になります。
逆算の方法は下記のとおりです。
(月額家賃−27,000円)÷2+11,000円=28,000円
⏩(月額家賃−27,000円)÷2=17,000円
⏩月額家賃−27,000円=34,000円
⏩月額家賃=61,000円
上記のとおり。
改正法令も紹介します
下記が、先ほど紹介した法律を改正する法律です。
令和2年4月1日から適用されています。
第二条 一般職の職員の給与に関する法律の一部を次のように改正する。 第十一条の十第一項各号中「一万二千円」を「一万六千円」に改め、同条第二項中 「各号に掲げる額」を「各号に定める額」に改め、同項第一号中「掲げる額」を「定める額」に改め、同号イ中「二万三千円」を「二万七千円」に、「一万二千円」を「一万六千円」に改め、同号ロ中「二万三千円」を「二万七千円」に、「一万六千円」を「一万七千円」に改める。
地方公務員の家賃補助→基本的に国と同じ
地方公務員の家賃補助は、自治体によって仕組みが異なります。
なぜなら、家賃補助の仕組みは、各団体の定める条例・規則によって決まるからです。
とはいえ、多くの自治体は国と同じ基準となっています。
なぜなら、国の基準をベースに条例を作っているからです。
なので、各自治体のおおよその目安を知りたいなら、国家公務員の補助額を見ればよいでしょう。
一方で、自治体別の正確な補助額を知りたいなら、下記の方法で確認できます。
正確な補助額の調べ方
下記のとおりです。
- 各官公庁が定める「一般職の職員の給与に関する条例」を確認する
- 各官公庁が定める「住居手当に関する規則」を確認する(①で分からない場合)
各官公庁の家賃補助のルールは、上記の条例・規則に書かれていることが一般的です。
なので、ウェブ検索で下記のとおり検索するのがいいでしょう。
- 「●●市 一般職の職員の給与に関する条例」
- 「●●市 住居手当に関する規則」
3万円超もらえる官公庁も存在する
国家公務員は最大27,000円(令和2年4月以降は28,000円)でした。
しかし、地方公共団体によっては最大3万円超もらえるところもあります。
例えば下記。
団体名 | 補助月額 |
横須賀市(神奈川県) | 最大30,900円 |
京都府 | 最大30,000円 |
このように、国家公務員よりも多くもらえる団体も存在します。
家賃補助が年収にあたえる影響
家賃補助の月額を28,000円として試算してみました。
期間 | 影響額 |
1か月 | 2万8,000円 |
1年 | 33万6,000円 |
38年 | 1,276万8,000円 |
上記のとおり。
なんと、家賃補助によって年収が約34万、生涯賃金が約1,277万アップします。
ちなみに38年というのは、大卒ストレートの22歳で就職し、定年の60歳で退職する場合を想定したものです。
わかりやすいです!ありがとうございました。
お役に立てて何よりです!
a 市の市役所で働いているのにb市に住んでいる場合は家賃補助はもらえなかったりしますか?
お問い合わせありがとうございます。とても嬉しいです。
自治体によっては、住んでる場所によって補助額が違う場合があります。
職場の近くに住んでもらった方が、災害発生時の対応がスムーズだったり、地名を覚えたりしてもらえるからです。
しかし、ほとんどの団体でそのような区別はありません。
私も、勤め先と違う市に住んでいましたが、満額受け取っていました。
心配な場合は、「〇〇市一般職の職員の給与に関する条例」などでネット検索すると、個別のルールが確認できるのでオススメです。
(居住地によって家賃補助が違う例)
京都府京都市
市内に住んでいる場合、通常の家賃補助額に3000円or1500円が加算される(令和2年度末まで)。
[根拠:京都市職員給与条例 付則12]
質問です。
夫婦で公務員なのですが、賃貸に住んでいます。
主人が賃貸の契約者で、現在住居手当をもらっています。
主人が休職して無給になった場合、配偶者である私が、住居手当を申請して受け取ることは可能ですか?
やはり、契約者の名義も変更しないと不可能でしょうか。(休職期間が様子をみながらの予定です。)
ちなみに、支払いは私の銀行口座から引落しています。
世帯主は、現在主人ですが、無給になった場合、私が世帯主として生計を支えていることになりますか?
お問い合わせありがとうございます!
国家公務員の根拠法をベースに回答すると、
お見込みのとおり、契約者名義の変更が必要だと考えます。
給与法第11条の10第1項に
「自ら居住するため住宅(貸間を含む。次号において同じ。)を借り受け〜」
と規定されているからです。
人事院の解釈通知「住居手当の運用について」を見ると
「第1項第1号に掲げる職員には、職員の扶養親族たる者が借り受けた住宅に居住し、家賃を支払っている職員を含むものとし〜」
と書かれており、扶養親族における例外規定はありますが、
奥様がバリバリ働いている場合の規定は
私の調べた限り、見つかりませんでした。
とはいえ、自治体によって取り扱いは様々でしょうから、
お勤め先の人事課に確認されるのが間違いないかと思います。
聞きづらい場合は、
職場のグループウェア等で住居手当の申請書様式がアップされているでしょうから、
その様式の記載項目を、一度確認してみてはいかがでしょうか。
「契約者と手当の受給者が違う場合」の記載欄がなければ、おそらくNGでしょう。
お役に立てれば幸いです。